焦る気持ち。@
『おはよう。今日は天気も良くてデート日和だね。』
朝一、届いた彼女からのメール。
今日は付き合って一週間になる彼女、と2回目のデートだった。
告白したのは俺の方。
一ヶ月前、友達の翔クンに買い物付き合ってもらったときに、偶然街で見かけた彼女に、
俺は・・・
恋をした・・・。
でも、それはあまりにも突然で、俺は「通りすがりの恋」と自分に言い聞かせ、
特に気にもとめなかった。
なのに・・・
「なぁ、松潤、今度うちの大学の女子がセッティングした合コンあんだけどさ、
俺も人集めしなきゃなんないのよ、来るだろ?」
ほとんど強制的にメンバーに入れられた俺は、口先では『うざい』と
言いながらも、『合コン』という短い言葉にあらぬ妄想を抱き、内心は結構浮かれていた。
そして・・・
当日、すこし遅れて着いた俺は申し訳なさそうに頭をさげて空いてる席に腰をおろした。
すると・・・現場にいる女子たちの中に、いたんだよ、・・・彼女が・・・。
『運命かもしんねぇ』というアホな期待と、『合コンに来るくらいだから軽い女なのかな』という
期待外れな思いを交互にめぐらせ、結局、俺はその日彼女とは話も出来なかった・・・。
それが期待通り、「運命」だと痛感させる出来事が起こったのが二週間前・・・。
寝ぼけて階段を踏み外した俺は、なさけないことに、足を捻挫し、病院通いを始めた。
大きな大学病院で、やたらと待たされる。
それが苦痛で耐えられず、痛い足を引きずりながら待合室をウロウロ・・・。
そのとき・・・、同じように診察の順番を待つ人の中に、いたんだよ、・・・彼女が・・・。
『やっぱ、運命だぁ・・・』以前の期待は、もう確信に変わってて、俺は迷う事なく
彼女に近づくと
「ちゃん・・・ですよね・・・?」
と声をかけた。そんな俺に彼女は不審そうに首をかしげると、
「・・・誰ですか・・・?」
と答えた・・・。
一瞬、目の前がクラっとしたけど、あの時一言も言葉を交わしてないんだから、
向こうが意識していない以上、俺の存在は知らないのと同じ・・・。
でも・・・あれは運命だった・・・。
だって・・・今、俺はと付き合ってんだから。
待ち合わせ場所に早めについて、俺はショーウィンドゥに映る自分の姿を目線だけ向けて
見つめていた・・・。
今日の予定は・・・
一応考えてある・・・。
「潤っ」
向こうから俺に手を振りながら、走ってくる彼女・・・。
俺の目の前で止まると、大きく肩で息をしながら上目使いで、うるんだ瞳を俺に向けた・・・。
「お、おはよっ///」
何、緊張してんだ、俺は・・・。
「ごめんっ、もっと早く着くと思ったんだけど、家出るのに時間かかっちゃって。」
「別にたいして待ってないよ。まだ待ち合わせの時間より5分前だし。」
「嘘?!」
「の時計壊れてんじゃないの?」
「潤はいっつも時間に遅れるから、てっきりもう時間過ぎてるのかと思って。」
「なんだよ、それ(-_-;)」
初めてのデートの時に、俺は15分の遅刻をした。
ちなみに、合コンの時にも、俺は30分の遅刻をしていた・・・。
「潤が早く着くなんて、なんかめずらしいね、いいことでもあったの?」
笑顔で顔をのぞきこまれて、俺は思わず視線をそらす。
俺よりも15センチ以上も背の低いは、肩まで大きく開いたTシャツにジーンズという格好で・・・
覗き込まれた瞬間俺の視線は、何の迷いもなくの胸元に落ちていた・・・。
「ねぇ、今日はどこに行きたい?」
俺は心の中のうずく欲望をさとられないように、視線をそらしたままでに問う。
本当は、もう予定は決めてるんだけど、・・・はこう聞くと、必ずこう答えるんだ。
「潤の行きたい所に行きたい。」
・・・ほらね・・・。
「俺さ、見たい映画があるんだけど、いい?」
「あ、いいね、映画。久しぶりかもっ」
純粋に喜ぶには申し訳ないけど・・・
これは、俺にとっては本当の目的にこぎつけるための・・・
単なる前おきにすぎなかった・・・。
映画館の中・・・
薄暗い場内・・・
半そでの俺の腕と、大きく開いた服のの肩が触れ合う・・・。
・・・開演前に買ったジュースの紙コップに刺さったストロー・・・
それを口にふくむのささいな行為にさえ、更に妄想と欲望は大きくなる・・・。
香水とは違う・・・もっと優しいシャンプーの香りが俺を包み込む・・・。
・・・手・・・くらいは・・・
にぎってもいいだろーか・・・。
映画に夢中になる・・・
映画どころではない俺・・・。
もぉ・・・
我慢できねぇ・・・。
もう、映画のストーリーも全くわからない俺は・・・
早くこの映画が終わればいい・・・と、そんな事ばかり考えていた・・・。
2へ進む。